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Vpon主催セミナー「デジタルファーストで進めるクールジャパン戦略」トークセッションをレポート!(前編)

2020年9月、クールジャパン機構は、中華圏(中国・香港・台湾)を中心とするアジア全域の消費者のモバイルデータを活用したデジタル・マーケティングを展開する Vpon Holdings(本社:東京都新宿区、以下、Vpon)へ出資しました。(プレスリリースはこちら

Vponは過去10年以上にわたり蓄積した月間9億ID以上のアジア消費者のモバイルデータを活用し、属性・興味関心・行動経路など具体的な消費者像を精度高く描き出すことを強みとしています。その分析結果を元に、日本企業や訪日インバウンド事業者の方々に対して、ユーザーに直接リーチする広告サービスや、プロモーション戦略を立案するデータサービスなどを提供しています。

今回、Vpon主催のオンラインセミナー「日本を世界に発信!デジタルファーストで進めるクールジャパン戦略~アウトバウンド(海外展開)がインバウンド反転攻勢の鍵を握る~」(配信日:10月15日)のトークセッションに当機構がゲストとして登壇しました。収録現場からトークセッションの概要を前編・後編に分けてお届けします!(内容は2020年10月現在、敬称略)

<登壇者>
Vpon JAPAN株式会社 代表取締役社長, Vpon Holdings株式会社 代表取締役CSO 篠原好孝さん
BEENOS株式会社 代表取締役社長 兼 グループCEO 直井聖太さん(ゲスト)
(※同社は越境ECプラットフォームを展開しており、Vponへ出資しています)
クールジャパン機構 投資戦略グループ マネージングディレクター 佐野一士(ゲスト)

Vponの新宿オフィスをスタジオにして収録が行われました

アウトバウンドもインバウンドも同じ「海外需要を開拓する」こと、つまり「クールジャパン」

篠原: Vponのお客様はインバウンドを中心に事業を展開してきた方々が多く、今何をすればいいのかというお問い合わせを沢山頂いています。インバウンドの延長上で何ができるのかを考えた時に、アウトバウンド施策もインバウンド施策と基本的には同じ「海外の需要を開拓する」こと、つまり「クールジャパン」なのではと考え、いかにそこをデジタルで加速できるかをテーマに今日はお話できればと思います。

Vpon Holdings株式会社 代表取締役CSO 篠原 好孝さん

篠原:さて今回のテーマに含まれている「クールジャパン」。色々な本を読みましたが明確な定義は見つからず、あえて言えば「世界からカッコいいと捉えられる、またはその可能性のある日本の魅力、またそこに包含されているものはすべてクールジャパン」ということでしょうか。例えば食・アニメ・ポップカルチャー・有名観光地はもちろんのこと、弁当箱、路地裏の風景、また関西人の気質なんていうのもあるようです。

直井:一つひとつが文化なのだと思いますが、仕掛けられたものというよりは自然発生的に生まれてきたものという気がします。それをたまたま海外の方々に日本の魅力として楽しんで頂いているのがクールジャパンではないかと。これからの課題は、それを面白いと思っている人たちにどう発信していくのか、ということかと思います。

佐野:ビジネス視点で言えば、海外需要開拓ができるような日本のモノ・サービスということだと思いますが、あくまで海外の人がクールだと思ってくれないとクールジャパンではありません。発見してもらう必要があります。ただ、発見され“待ち”ではなく、なるべく効果的に、ニーズがあるところにきちんとターゲティングしてアピールしていくことが必要と考えています。

篠原:内閣府のクールジャパン戦略では、まず「①現地で日本ブームを創出」し、「②海外で外貨を稼ぎ(アウトバウンド)」、そして「③インバウンド」につなげるということが掲げられています。この流れの中で、クールジャパン機構は日本の魅力を海外へ伝える事業に対して投資することがミッションと思いますが、そもそも国の文化を海外に輸出するというのは相当な投資と時間が必要かと思います。やはり中長期的な視点で継続的に投資先企業を支援されているのでしょうか。

クールジャパン戦略におけるイン・アウトバウンドマーケティングの関係性
(資料提供:Vpon JAPAN株式会社)

佐野:おっしゃるとおり「クールジャパン」はなかなか簡単には実現できません。腰を据えて中長期的視点で事業を捉える必要があります。私たちは投資して終わりではなく、特に強いつながりを持っている地方自治体やDMOなども含め、国内外のネットワークを活かし、投資先事業を支援しています。投資担当とは別にビジネスマッチングの担当者がいて、海外需要を開拓していきたいという全国の皆様と、我々の投資先企業がともにクールジャパンを推進していけるような取組をさせて頂いています。

篠原:Vponのお客様は海外需要を開拓していきたいという方々です。ぜひタッグを組ませて頂いて、お客様の取組がデジタルで加速されるよう進めさせて頂ければと思います 。

クールジャパン機構 マネージングディレクター 佐野一士

国ごとに日本の捉え方が異なる中、どの国にどのようにマーケティングを仕掛けていくか

篠原:さてBEENOSはどのように日本と世界をつなぐ越境ECのリーディングカンパニーとなったのでしょうか。

直井:当社はもともと国内ECでIPOをした会社で、次の成長のために海外に着目したのが約12年前。きっかけはリーマンショックです。ネガティブな側面ばかりの中でアジアのマーケットに目を向けたところ、間違いなく成長すると思いました。最初に立ち上げたのは国内事業者製品の海外転送サービスです。手探りの中、勢いでオープンしましたが、プロモーションをかけていなかったにも関わらず、結果的に中国・香港・台湾など多くのお客様にご利用頂きました。

BEENOS株式会社 代表取締役社長 兼 グループCEO 直井 聖太さん

直井:私は2008年~2009年頃を第一次越境ECブームと呼んでいますが、そのとき日本のEC事業者はほぼ準備の段階でつまずいていました。そこに対して、私たちは事業者が準備に時間やお金がかからないように海外対応するというソリューションを進めてきました。10兆円程ある日本のEC市場の中で、海外からのアクセスは3%程度存在していましたが、これに対応できないということは、リアルで言えば飲食店を開いたのにお客様を断っているのと同じです。そこを繋げただけで、結果的に私たちの海外事業は300億円規模まで伸びてきています。入り口があるからこそ、お客様の口コミが広がり、次に繋がるのです。まずは海外の方々のための「入り口」を作りましょうということが、私たちが提案していることです。

BEENOSが提供する、海外ユーザーの商品購入を可能にするサービス「Buyee」
(資料提供:BEENOS株式会社)

篠原:一口に「越境EC」と言っても様々なご相談があると思いますが、お客様が共通して抱えている課題は何でしょうか。

直井:今のフェーズでは「入り口」を作った先の具体的な戦略をお持ちでないお客様が多いのが実情です。いかに海外にマーケティングを仕掛けていくか、それこそが戦略の第一歩と思っていますが、多くの方がまだその戦略まで描けていません。今回Vponに出資させて頂いた理由は、Vponがそのために必要なデータを持っているからです。どこの国の方が、日本の何に興味を持っていて、何を買っているか、といったデータです。
海外では国ごとに全く日本の捉え方が違い、当社のサービスも国によって利用者の年代が異なります。例えば、香港・台湾では安室奈美恵さんやSMAPに代表されるJ-POPが入ってきた40歳代以上の世代が日本に共感している一方で、アメリカでは20歳代前半を中心に若い人たちが日本のオタク文化に興味を持っている。海外の方に商品が手に届く状態を作ったうえで、データを活用・分析し、どの国にどのようにマーケティングを仕掛けていくかを考えることが、これからは重要なのではないかと思います。

前編では、「アウトバウンド」も「インバウンド」もデータを活用・分析したうえでマーケティングを仕掛けることの重要性についてお伝えしました。 後編では、いかにそれをデジタルで加速していくか、また、VponとBEENOSのソリューションをどう掛け合わせていくかについてお届けします。

(後編に続く)

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