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<対談/後編> NY発ファッションブランド “M.M.LaFleur”×老舗ニットメーカー“米富繊維”

2021/02/24 投資先情報

2021年2月、米国の女性たちに向けNYのファッションブランド「M.M.LaFleur」から、山形県の老舗ニットメーカー「米富繊維」のニットテキスタイルを使ったジャケットが発売されました。今回、「M.M.LaFleur」創業者の一人で、デザイン部門の責任者である中村美也子チーフクリエイティブオフィサーと、米富繊維の大江健代表取締役社長の対談が実現しました。その後編をお届けします。

*前編はこちらをご覧ください。

Q. 中村さんから見て、米国のファッション業界でテーマとなっていることは何ですか。

中村:米国では「サステナビリティ」が一大テーマです。日本ではもともと物を大切にするというカルチャーがあるので大きな変化ではないかもしれませんが、米国の業界では誰もが「長く着られる物」を作るにはどうすれば良いかを必死で考えています。その意味で、「着飾る」ということにネガティブな印象がつき始めているのは事実です。「ウェルネス」「エクササイズ」「ビューティー」「フード」にお金を使うことは正しいけれど、ただ着飾るための「ファッション」にお金を使うことは正しくないという風潮があります。

業界の人たちは、ファッションとは美しく、人の人生を支え、心が躍るトピックスと考えているので、この風潮の中でどう前へ進んでいくかが一番の課題となっています。自分たちだけでその世界に陶酔するのではなく、ファッションを機能させ、美しくて強いものだと理解してもらうことで、その課題を解決していく努力をしていかなければならないと思います。

「M.M.LaFleur」×「米富繊維」のニットジャケット(2021年2月、米国にて発売)

Q. 昨今の新型コロナウイルス感染症の影響もあり、日本や米国のファッション業界はどのような変化を強いられているでしょうか。

大江:日本の多くのファッション関連企業がECにシフトしたり、ブランドの数を減らしたり、急激な変化を強いられています。コロナ前から検討してきたことについて、今すぐ結論を出さなくてはいけない状況です。恐らくコロナ禍が過ぎても業界が元通りになることはないため、過去のやり方や考え方を踏襲することが、あまり意味がないことになっています。

中村:コロナ禍は米国のファッション業界にも大打撃を与えました。人が外に出ないので、服を着て自分をプレゼンテーションする場がないのです。素敵な洋服を買うよりは、快適なパジャマを買おうとなる。今、業界では「ゆったり過ごす」という意味の「lounge(ラウンジ)」がキーワードで、スウェットスーツがよく売れています。

「M.M.LaFleur」×「米富繊維」のニットジャケット(2021年2月、米国にて発売)

中村:米ファッション誌「ヴォーグ」が表紙に選んだカマラ・ハリス米副大統領の写真は、一枚はスーツ姿で、もう一枚はスニーカーを履いたラフな装いでした。米国でも物議をかもしたのですが、まさに今の時代を象徴していると思います。私たちのブランドも、もともとカジュアルにシフトするという計画でしたが、それを猛スピードで進めています。働く女性が輝き、素敵な人生を送るために求められる未来の装いのイメージが大幅に変わりました。

大江:世の中がスーツからスウェットスーツにシフトしても、スーツ自体が全く無くなるわけではありません。今までスーツ中心の事業を展開してきた会社は、その事業は一部残したまま、その延長線上で新たにできることを考えていくことが必要ではないかと思います。これからのファッション関連企業は、大きな事業を一つではなく、中規模の事業を複数手がけるようになっていくのではないでしょうか。

中村:確かに一つのブランドが洋服、シャツ、ハンカチ、靴下など全てを作るのではなく、それぞれに特化したブランドが、その分野を徹底的にリサーチして、ユニークなものを作り上げるというケースが増えてきています。これからは、人々がそのようにして作られたファッションを楽しむようになるのだと思います。

Q. 今後、実現したいことを教えてください。

大江:今回「M.M.LaFleur」とお仕事をご一緒できて、日本の山形県山辺町という場所に私たちのような会社があるんだということを海外へ伝えることができるようになりました。これをきっかけに海外ブランドとの取組を広げ、会社を進化させていけるように頑張っていきたいと思います。

中村:これからは一つひとつの商品が特別な意味を持ち、長く大切に着てもらうことが重要になります。日本に多くいる、商品を大切に作っている作り手の皆さんと一緒に、特別なものを沢山作っていくことが私の一番の夢です。困難なことは沢山ありますが、それを乗り越えることができるのは「クリエイティビティ」のパワーです。難しい時代ですが、情熱を失うことなく果敢に挑戦していきたいと思います。

(終わり)

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