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“名古屋から世界60億人の毎日にワクワクを” ワンダープラネットが追求し続けるエンターテインメントの姿(後編)

2021/09/30 投資先情報

世界に向けてスマホゲームを発信している名古屋発のベンチャー企業「ワンダープラネット」。2021年6月に東京証券取引所マザーズへの新規上場を果たした同社の代表取締役社長CEO、常川友樹さんのインタビュー後編をお届けします。

前編はこちらをご覧ください。

ユーザーとのコミュニティを大切にする、そこから始まった海外事業の躍進

Q. 御社の海外売上高比率は35%と、日本のスマホゲーム会社の中でかなり高い数字です。海外事業が強い理由は何でしょうか。

創業当初より海外は強く意識していまして、1作目のタイトルから海外展開は行っています。3作目の時点で155の国と地域への配信を行っていましたが、当時は日本語版を様々な言語へ翻訳し配信していただけの状態でした。4作目の「クラッシュフィーバー」から明確に変えたことは、特定の地域でしっかり遊んでいただけるような施策を行なったことです。例えば、台湾や香港でのオフラインイベントの実施はその一つです。現地のお客様と交流しながらファンコミュニティを大切にし、一緒に長く「クラッシュフィーバー」を楽しんでいただこうという状態をオフラインでもオンラインでも作り続けていました。それが海外事業の拡大につながったと感じます。

また、海外向けのゲーム開発・運営・マーケティングを強みとする「グローバルスタジオ(※現在は東京スタジオ)」を東京オフィスに設置しています。80名ほどのメンバーのうち約6割が外国人で、子供の頃から日本のコンテンツやゲームに触れ、それらに関わる仕事がしたいというメンバーたちが集まっています。彼らの採用はリファラル経由が約6割となっており、やはり日本のコンテンツの力は大きいなと実感しています。

Q. クールジャパン機構からの出資は御社の海外事業にどのような影響を与えましたか。

クールジャパン機構との出会いは、既存株主であるグローバル・ブレイン社からご紹介いただいたことがきっかけです。世界中にエンターテインメントサービスを届けたいという私たちの思いと、クールジャパン機構の出資意義が非常によくマッチして、2019年に投資が決定しました。

ちょうどその頃、私たちは複数タイトルの海外展開に向けて動きだしており、週刊少年ジャンプの創刊50周年を記念した「ジャンプチ ヒーローズ」の繁体字版や、株式会社スクウェア・エニックスの「VALKYRIE ANATOMIA-THE ORIGIN-」の英語版・繁体字版リリースを直近に控えていたため、クールジャパン機構からの出資金は、それらタイトルの海外展開に必要な資金に活用させていただきました。

ゲームはリリースするときに一番お金がかかります。最初にプロモーションを大きく打ち上げ、より多くのファンを獲得し、長く続けていただくことが大切です。まとまった規模の金額をゲーム会社に投資いただけるケースは決して多くない中で、クールジャパン機構からの最大10億円の出資金があったことにより、海外に向けて大きな勝負に出ることができました。

ゲームの力を通して日本コンテンツのファン層拡大に貢献する

Q. 御社は日本の人気キャラクターとコラボレーションしたゲーム開発・運営を得意としています。御社のゲームを通して、日本のコンテンツが世界に発信されることにどのような意義を感じますか。

世界中に多くのゲーム会社がある中で私たちのタイトルを選んでもらうためには、私たちらしいものづくりをすることが大切です。海外のお客様にとっては、私たちらしさの一つが「日本らしさ」、つまり日本コンテンツとのコラボレーションなのかもしれません。私たちのゲームが世界中のお客様にとって日本のコンテンツに触れるきっかけとなるなら嬉しく思います。

例えば、週刊少年ジャンプの人気キャラクターが多数登場する「ジャンプチ ヒーローズ」は、今まで同誌に馴染みのなかった海外の方や国内の小さなお子さんたちが同誌を知るきっかけになっていると聞きます。ゲームの力を通して着実に日本コンテンツのファン層の拡大に貢献できていると感じますし、そこから漫画やグッズの購買につながることも踏まえれば、日本コンテンツに対して幅広いポジティブな影響があるのではないかと思います。

Q. 今後のさらなる成長に向けて、課題となっていることは何でしょうか。

私たちの海外事業は「クラッシュフィーバー」「ジャンプチ ヒーローズ」を中心に、繁体字圏である台湾・香港では一定の成果を出していますが、欧米圏等ではまだ大きな成果を出したとは言えません。“ミッション”である「楽しいね!を、世界中の日常へ。」を実現するためには、繁体字圏以外の国や地域にもファンを拡大することが課題です。

また、コロナ禍の巣ごもり需要の影響でゲーム人口は確かに拡大しましたが、肝心なのはこの状況が終わった後に、厳しい競争環境の中でも、私たちのタイトルがしっかり受け入れられるようにすることです。そのために今できることは、やはり地道に改善を積み重ねていくこと。長期的な運営力が私たちの強みでもあるので、今後10年、20年と長く楽しんでいただけるタイトルを、継続的にリリースしていきたいと思っています。

世界中の人たちが毎日楽しめる究極の日用娯楽サービスを

Q 最後に、ワンダープラネットをどのような会社にしていきたいですか。

元々ゲーム業界出身でないメンバーたちが集まってできた会社ですので、私たちの提供するものはゲームらしいゲームとは少し視点が異なります。私たちは自分たちの事業を「エンターテイメントサービス事業」、つまりサービス業と定義づけています。

よくコンビニに例えていますが、コンビニは品ぞろえや来店者の導線の工夫など、毎日行きたいと思わせるような店舗づくりがとても上手です。同様に私たちも開発したゲームを単にリリースして終わりではなく、お客様に「今日行ったら何か面白いものがあるのではないか」とワクワクさせるようなラインナップを揃え、世界中の人たちに毎日ゲームを起動して楽しんでいただけるような、「究極の日用娯楽サービス」を提供したいと考えています。

私たちが追求する「楽しいね!を、世界中の日常へ。」には4つの意味があります。まず「楽しい」は“エンターテインメント”、そこに「ね!」がつくことで“友達や家族と共有”するということ、「世界中」は“グローバル”、そして「日常」は“毎日楽しんでいただけること”。極論で言えば毎日60億人が楽しめるゲームを作るということなので、そう簡単には実現できませんが、それを変わらず追求していくことがワンダープラネットの本質です。

(おわり)

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