クールジャパン機構は2019年8月、アジア域内の旅行者向け現地ツアー・アクティビティのオンライン予約・販売をおこなうKKdayに出資しました。(プレスリリースはこちら)
また2020年9月には、中華圏(台湾・香港・中国)を中心とするアジア全域のモバイルデータを活用したデジタル・マーケティングを展開する Vpon Holdings(以下Vpon)にも出資しています。(プレスリリースはこちら)
KKday は、台湾・香港を中心とするアジアの人々が、日本を含む世界の国々で個人旅行をする際 に、魅力的な「体験」を提供する様々な現地ツアー・アクティビティや、テーマパーク、飲食店、鉄道・ フェリーといった交通関連のチケットなどを、オンラインで手軽に予約・決済できる Web サイトおよびアプリを運営しています。現在、世界約 92 ヵ国・地域 550 都市における約 3万件のサービスを展開し、アジアでも有数の「旅ナカ」に特化したプラットフォーマーに成⾧しています。
一方のVponは過去10年以上にわたり蓄積した1億IDのアジアスマートフォンユーザーのモバイルデータを活用し、属性・興味関心・行動経路など具体的なユーザー像を精度高く描き出すことを強みとしています。その分析結果を元に、海外訴求を行う日本企業や訪日インバウンド事業者の方々に対して、ユーザーに直接リーチする広告サービスや、プロモーション戦略を立案するデータサービスなどを提供しています。
今回、KKdayとVponが共催するウェビナー「地域観光の高付加価値化セミナー」(配信日:11月25日)のトークセッションに当機構がゲストとして登壇しました。トークセッションの概要を前編・後編に分けてお届けします!(内容は2021年12月現在、敬称略)
<登壇者>
KKdayグループ 日本支社 統括責任者 深井 洋平さん
Vpon JAPAN株式会社 データ事業部 シニアマネージャー 鮎澤 貴さん
<ゲスト>
クールジャパン機構 投資戦略グループ バイスプレジデント 澤谷賢一
~ withコロナ時代のインバウンド需要獲得に向けて、いまからできること ~
クールジャパン機構・澤谷
私は北海道札幌市出身ですが、緊急事態宣言が発出して以来、ずっと帰省できませんでした。観光に関連するインバウンド関連事業のみなさんは、その間本当に大変な思いをされ、今日まで耐えてきていらっしゃると思います。そんな厳しい状況の中ですが、インバウンドへの準備のためのセミナーに参加いただいて大変ありがたく思っています。今日は次の3点をお伝えしたいと思っています。
最初は、クールジャパン機構がなぜKKdayとVponに出資したのか、投資の目的についてお話します。クールジャパン機構の投資領域は次の4つです。食、衣料ライフスタイル、メディアコンテンツ、インバウンド。KKdayとVponは両社とも台湾創業で中華圏のユーザーを有するインバウンド関連のプラットフォーマーという位置づけです。
Vponは台湾、香港、中国のユーザーに対するモバイルでのメディア広告やビッグデータに基づいたソリューションビジネスを展開するインバウンド向けの事業社です。まさにインバウンドにおける日本市場を成長させているフェースになっている企業です。
KKdayは中華圏に加えて韓国で、ユーザーが利用するOTAプラットフォーマーで、アクティビティを含む日本の観光資源などを流通させる企業です。このため中華圏を中心にしたインバウンドの需要サイドの促進をできるプラットフォーマーという位置づけで投資しています。
二つ目にお伝えしたいことは、現在の市況、インバウンドの競争環境について、今まさにインバウンドの復活を待っている状況ですが、各国がインバウンド需要を呼び込むためにいろいろなプロモーションや戦略を講じて準備を始めています。まだ市場は過酷な状況ではありますが、まずはできることからチャレンジしてほしい、今日からできることの参考になればうれしいです。
最後に、インバウンドが復活したとしても、コロナがゼロになることは想定しづらいかと思います。withコロナ時代のインバウンドについて、とくに中華圏ユーザーの観点から見た新しい発見があればうれしいです。
セッション1「ちょっと変わったニッチ需要を考える~台湾市場から~」
Vpon JAPAN株式会社 データ事業部 シニアマネージャー 鮎澤 貴さん
私は2年前まで長野県内の観光振興団体におりました、今日ご参加の行政関係の皆様と同じ目線でお話できればよいと思います。はじめにVponは、台湾で創業したビッグデータカンパニーです。具体的には各種ビックデータを所有して、デジタル広告やデータ分析に利活用するデジタル・マーケティングの会社です。
高付加価値化に対しては、潜在顧客のセグメンテーションとターゲット設定が重要
さて、今日のセッションのテーマですが、ニッチ需要で付加価値を向上させるにはまず「何を(WHAT)」したらよいでしょうか。実際に、〇〇+ツーリズムと呼ばれるニッチな需要は無数にあって、どれから手をつけたらよいのかわからないーといった声をよく聞きます。最終的に地域の稼ぎにつながることが求められますが、流行り廃りが早いため流行を追いかければよいという訳でもありません。例えば「大河ドラマ」のようなコラボ系のコンテンツは大きな需要が生まれますが一年で消えていきます。この時どの年齢層の顧客が動くのかを把握することが重要なポイントになります。ブーム後の継続的な来訪につながるかを判断することができるでしょう。
次に「誰に」を語る前に、価格感を押さえていただきたいと思います。昨年の観光庁の調査結果で、体験アクティビティの採算ラインは1万円以上と出ています。この価格感は、誰を狙えばよいかということにつながっていくので、しっかり押さえていただきたいところです。
では、「誰に(WHO)」ということで、参加者を具体的にイメージすることについて少し深堀してみます。まず、旅行は高価な消費体験です。アクティビティ自体にいくら支出できるかは、旅行参加者の年収から予測することができます。世帯年収900万以上であればレジャー費用は平均20万程と言われていますからこの場合1万円以上のアクティビティ費用も容易に捻出可能です。当然、900万円以上の世帯なら数万円レベルのアクティビティの販売も可能で、彼らは全体の15%を占めています。少ないとみるか、多いと見るか。高付加価値なアクティビティを少しでも多くの参加者に体験してもらおうとした場合、海外へ目を向けなくてはいけない理由はここになります。香港や台湾は、日本の世帯収入と大きくかわらず、平均より所得が高いリッチ層の割合も日本と大きく違いはありません。このように高付加価値化を進めるには誰を狙えば良いのかを選定することが非常に重要なポイントです。
旅行者に求めらる体験コンテンツは特定のカテゴリーに偏っているわけではありません。ガイドツアー、施設見学、森や海、船舶、山など幅広いオプションを持つことが重要です。
また、アクティビティに利用できる費用は、所得に連動するため、お財布事情に合わせて階層別に見合ったサービスを提供することも大切です。地域文化のファン獲得を目的とする場合など必ずしも採算が取れることが必要なわけではなく、アクティビティ自体が来訪要因になることもあります。松竹梅を作り、旅行者がお財布事情に合わせてセレクトできるようになればベストです。
Vponは位置情報をはじめ利用アプリ、レシートデータなどの多様なデータを保有しています。これらを機械学習による分析を通して、属性や興味、行動に分けて利活用ができます。具体的にはターゲットをプロファイリングして特定していくことができます。例えば、居住地(香港・台湾)>所得(高所得層)>年齢(壮年)>滞在携帯(短期)>情報経路(SNS)>予約方法(旅マエ予約)>旅行形態(個人)というようにセグメントをつくって的確に情報発信していくことができます。
あるいは、みなさんがスマホで利用しているアプリの利用率等を可視化することでユーザーインサイトを分析することもできます。例えば高所得者層の特徴は、ファイナンス、ライフスタイル、ショッピングアプリを比較的多く入れている傾向があり、さらに掘り下げると高級ホテル、エアライン、ステータスカード、外車ユーザー専用アプリを利用しています。これらの会社とコラボしたり、特定のアプリユーザーに広告を配信したりすることも可能です。
また台湾の中のどこに住んでいるのか。台湾のシリコンバレーと言われる新竹にも高所得者が多く住んでいます。台北だけでなくこういった点も視野にいれながらプロモーションを設計することが大切です。
まとめです。結局はどうセグメントを切り出し見分けるかが重要になります。そして高付加価値化で大切にするべき軸は旅行参加者の所得になるでしょう。所得が高ければ当然地域で消費する金額もアップしますので、ライフスタイルを意識した商品構成が必要になると考えています。
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前編ではVponの鮎澤さんから「高付加価値化に対しては、潜在顧客のセグメンテーションとターゲット設定が重要」ということをお伝えしました。後編では、KKdayの深井さんから「旅行者の価値観変化をとらえた今やるべき高付加価値化への第一歩」について、そして視聴者への質疑応答も交えたお二人のトークセッションをお届けします。
(後編につづく)